アニメ・第4回 新技術を選び取る人たち
2027年4月に新設されるマンガ・アニメクリエイション学科。アニメ部門の特別顧問に就任された森田宏幸先生から、業界を目指す皆さんへのメッセージをお届けします。森田先生はアニメーターを経て、スタジオジブリ作品の監督などを務められてきました。AI時代のアニメ業界の将来性や、アニメーターになるために必要な資質について、全6回にわたってお届けします。
私は絵を動かすのが好きだったのですが、アニメーターになった当時、業界は宣伝をアニメ雑誌の止め絵の記事に頼っていたので、見栄えを良くするためにキャラ絵は線が多くて動かしにくく、動きの表現は二の次とする風潮があって不満でした。
今はネット配信が定着し、SNSのトレーラー動画が宣伝に貢献するため、動きの質も求められるようになりました。動きの上手いアニメーターが重宝されて良い時代です。
昔の現場でのタフなやりとりは、世代の気質のせいもあったと思います。私よりも若い世代は、むやみに争わず、どうやれば効率よく仕事を進められるか立ち止まって考えられる人が頭角を現し、目立つようになった印象です。そこへ重ねて、デジタル化の波が訪れて、現場の空気は変わっていったように思います。
作画のデジタル化は液晶タブレットの質の向上を待たねばならず遅れましたが、液晶を頼らないペンタブレットを使って、2000年代後半にいち早くデジタル作画を取り入れた世代がいます。『超かぐや姫!』(2026年 スタジオコロリド、スタジオクロマト)の山下清悟 監督もその一人です。
ペンタブレットで作画するメリットは、PCで動きを素早く再生出来ることです。線画だけの動画ならすぐに書き出してネットに上げられました。ネットを利用して、自分が描く技術を売り込むことが出来たんです。
山下監督は、CG技術を用いてプレビズ映像(試作のようなもの)を作って、自分が求める動きのイメージをアニメーターに伝える工夫をしたそうです。『井上俊之の作画遊蕩』(井上 俊之 著、 高瀬 康司 著/編集 2024年 KADOKAWA)の対談で語られています。スタッフと非効率な軋轢が起こりがちなところを新しい技術で克服したわけです。
日本の商業アニメで、デジタル作画を独自に、先んじて取り入れたアニメーターたちは、時代の要請に押し切られ、嫌々受け容れたわけではありません。積極的に技法を自分で選び取った先駆者でした。とはいえ、デジタル技術を取り入れたから、良い動きを描けたわけではありません。作画技術を探求する姿勢や、これが面白い!と魅力を見極める感性があったればこそです。
『超かぐや姫!』もデジタル技術だけで成功したわけではなく、自分が作りたいものは何なのか? 何を作れば観客が喜んでくれるか? 山下監督が真剣に考えたことは言うまでもありません。
森田宏幸先生 プロフィール
アニメーション作画・演出。1964年福岡生まれ。『AKIRA』(1988年)『PERFECT BLUE』(1997年)など多数の作品のアニメーター/スタジオジブリ『猫の恩返し』(2002年)、TVシリーズ『ぼくらの』(2007年)、『聖剣学院の魔剣使い』(2023年) 監督/『日本心理学会心理学叢書 アニメーションの心理学』(2019年)共著/東京工芸大学芸術学部アニメーション学科 教授(2024~2025年)