アニメ・第2回 半分当たったけれど、半分外れてきた未来予測
2027年4月に新設されるマンガ・アニメクリエイション学科。アニメ部門の特別顧問に就任された森田宏幸先生から、業界を目指す皆さんへのメッセージをお届けします。森田先生はアニメーターを経て、スタジオジブリ作品の監督などを務められてきました。AI時代のアニメ業界の将来性や、アニメーターになるために必要な資質について、全6回にわたってお届けします。
アニメに関する悲観的な未来予測は、半分当たるけど半分は外れるという話の続きです。
私がアニメーターを志した80年代後半では、「どうせ食べていけない」「今はブームなだけ、いずれ駄目になる」と言われていました。すでに第二次アニメブームでしたが、一般にはアニメーターってなに?という時代でもあったんです。
実際、途中で辞めていく同僚がいましたし、私も貯金を食い潰して辛かった時期がありました。その意味では予測は当たりました。しかし、業界は長期的には右肩上がりで仕事を増やしていきました。私のある友人は、一度アニメーターを辞めて他のアルバイトをやったあと、思い直して戻って腰を据えて、のちに劇場映画の作画監督をやるまでになりました。なので「どうせ食べていけない」という予測は半分外れました。
当時、ほかにも「動画の仕事は海外の安い下請けに出されて、国内からなくなる」と言われました。早く原画にならなければと思ったものですが、実際、動画が海外に依存するようになっても、国内からまったくなくなることはありませんでした。近年、アジアの人件費高騰と人材育成の必要から国内に回帰する風潮すらあります。「なくなる」という予測は半分外れです。
「これからはゲームの時代、アニメは終わり」とも言われたときがあります。確かにゲームはアニメをしのぐほどの人気になりました。しかし、それでアニメが減ることはなく、むしろゲーム原作や連動企画が増えました。やっぱり半分外れです。
90年代末の仕上げと撮影のデジタル化は大きな変化でした。仕上げは生産性が上がる代わりに人員が減り、職を失った方がおられ、撮影さんの中には、廃業を決めた方もいらっしゃいました。それでも、仕上げと撮影の仕事はなくならず、作品数の増加に伴って増えますし、デジタル技術によって表現は進化します。セル画に繊細な陰影や光や、質感を与えることが出来るようになりました。
このように、悲観的な予測は半分当たって、半分は外れて、結局アニメの仕事はずっと続いて来たというのが私の印象です。
とはいえ、巷のビジネスパーソンが語るAIのインパクトは目覚ましいものがあります。AIが招く変化は想像がつかないところもあります。
森田宏幸先生 プロフィール
アニメーション作画・演出。1964年福岡生まれ。『AKIRA』(1988年)『PERFECT BLUE』(1997年)など多数の作品のアニメーター/スタジオジブリ『猫の恩返し』(2002年)、TVシリーズ『ぼくらの』(2007年)、『聖剣学院の魔剣使い』(2023年) 監督/『日本心理学会心理学叢書 アニメーションの心理学』(2019年)共著/東京工芸大学芸術学部アニメーション学科 教授(2024~2025年)