第1回 アニメーターの仕事はAIに奪われるのか?
2027年4月に新設されるマンガ・アニメクリエイション学科。アニメ部門の特別顧問に就任された森田宏幸先生から、業界を目指す皆さんへのメッセージをお届けします。森田先生はアニメーターを経て、スタジオジブリ作品の監督などを務められてきました。AI時代のアニメ業界の将来性や、アニメーターになるために必要な資質について、全6回にわたってお届けします。
アニメの仕事はAIに奪われてしまうのですか?とよく聞かれます。皆さんとしては、私のような現場からの答えが聞きたいですよね。
今、私が関わる手描きの商業アニメの仕事でAI の利用はありません。調べものには大変便利ですが、作画や絵コンテで生成AIを使うのは見たことがありません。
専用の部署を作って活用を模索しているアニメ会社があると2年前に聞きましたが、私が関わる範囲には未だにAIの影響は現れていません。AIの導入を嫌う方も多いと聞きますので、私に伝わって来ないだけかも知れませんが。
個人で、アニメも含めた広告の仕事をやっている私の友人は積極的にAIを活用しています。個人作家は仕事のやり方が自由で導入しやすいのでしょう。ただ、AIでやれることは限られるとも話していました。
日本の商業アニメの最新技術に対する対応の鈍さは今に始まったことではありません。90年代末、フィルム撮影がデジタル撮影(Adobe After Effectsでのコンポジット)に切り替わって30年が近づき、作画のデジタル化(CELSYS CLIP STUDIO PAINTなど)が加速してからは10年を過ぎていますが、「これからは3DCGに切り替わっていくだろう」とまで言われる一方で、紙に鉛筆で原画を描いているベテランも健在で、デジタル作画にしても、ペンタブレットの手描きが中心ですから、手描きアニメーターのやっていることは変わりません。
手描きから3DCGに移って行ったアニメーターはいます。手描きアニメでも、水などの自然現象がCGで描かれるようになったり、レイアウトに3Dモデルが利用される事例も増えました。
ここからはあくまで私の個人的な推測です。
「〇〇に仕事を奪われる」とか「もう手描きアニメはなくなる」などといった悲観的な予測は過去にもあって、それはいつも半分当たって、半分外れて来ました。あくまでざっくりした印象の話ですが。当たるのは半分だけ。半分は外れて来たんです。だからAIも同じではないか、と私は思うことにしています。
AIの台頭で仕事がなくなることはないけれど、長い目で見て変化がないとは言い切れません。それがはっきりした時、現場はもちろん、大学や専門学校も対応するでしょう。CLIP STUDIO PAINTやAfter Effectsを教えるようになったように。
問題は、AIで仕事がどう変化するかですよね。
森田 宏幸 先生 プロフィール
アニメーション作画・演出。1964年福岡生まれ。『AKIRA』(1988年)『PERFECT BLUE』(1997年)など多数の作品のアニメーター/スタジオジブリ『猫の恩返し』(2002年)、TVシリーズ『ぼくらの』(2007年)、『聖剣学院の魔剣使い』(2023年) 監督/『日本心理学会心理学叢書 アニメーションの心理学』(2019年)共著/東京工芸大学芸術学部アニメーション学科 教授(2024~2025年)